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この本を読まれる方へ
この本をお求めいただきましてありがとうございます。
この本は、平成10年度~14年度の鹿児島大学全学研究プロジェクト、“新しい関係性を求めて-コミュニケーションの諸相
”に参加した「歯科治療と関係性」グループの報告書『口と顔の医療」をベースに、一般の方々に関心の高いテーマを
取り上げて読みやすくわかりやすく書き直したものです。
鹿児島大学は、8学部を擁する全国でも指折りの大ききの総合大学です。田中弘允前学長はご就任の当初から、総合大学の
利点を活かした全学的な研究プロジェクトの必要性を説かれ、その研究成果を社会に還元しようと提案されました。この提
案を受けて、農学部を事務局とした“大地・食・人間の健康を保全する環境革命への試行”と、法文学部を:事務局とした
“新しい関係性を求めて-コミュニケーションの諸相-”の二つの全学研究プロジェクトが立ち上がり、それぞれ研究報
告会の開催と報告書の発行を続けてきました。
「歯科治療と関係性」グループの構成員は全員、鹿児島大学歯学部の教官です。歯科治療や表情筋の研究、臨床心理学の研
究を通じて日頃から交流がありましたので、ごく自然に研究グループを結成して全学研究プロジェクトに参加しました。し
かも平成11年8月には日本顔学会の学術大会が鹿児島市で開催されたので、これをきっかけに同年12月に鹿児島顔談話会を
設立し、他学部の教官や、学外の皮膚科医、美容師、画家、マスコミなどさまざまな職種の方々を巻き込んで毎年12月に定例講演会を開催するまでになっています。
さて、口と顔とこころは、切っても切り離せない密接な関係にあります。歯科医療は、歯と顎と唇を中心にした医療で、つ
ねに口と顔とこころに関わっています。このことを、この本では4部構成で表わすことにしました。
I部では、歯科とコミュニケーションをとりあげました。歯科が、人間社会のコミュニケーションにどのように関わって
いるか、咀嚼や表情を支えるからくりがどうなっているかについて解説しました。
Ⅱ部では、関係性の改善と歯科治療の関わりについて、入れ歯と快適人生の関係、矯正治療や外科矯正治療が患者さんに
もたらす関係性の改善、口唇口蓋裂児の正常言語獲得や、咬合改善と歯科治療の役割などを通じて解説しました。
Ⅲ部では、ストレス社会がもたらす口の機能障害について、顎関節症の患者さんのことや治療法、顎関節症とのつきあい
方、ストレスマネジメントについて解説しました。
Ⅳ部では、社会の人々が口や歯科医療に求めるものをアンケート調査から探り、口が人間関係とどのように結びついてい
るか、歯科医療に対して患者さんがいかにコミュニケーションを求めているかを浮き彫りにしました。
現代の社会では、豊かさと長寿を手にすることが可能になりましたが、同時にさまざまな軋轢や緊張感が高まっています。
心とからだの健康を維持増進するために、口と顔が果たす役割と、それに対する歯科医療の関わりを再認識していただくき
っかけになれば幸いです。
平成16年3月吉日
伊藤学而 |